本当にその商品は売れますか?|商品開発時の市場調査5つの観点
こんにちは、マーケティング・経営コンサルティングを生業としている株式会社Taste and Logicの代表原賀です。
今回のテーマは、商品開発のための市場調査。
そのコンセプトは、客観的な立場を通すとどういう評価なのか?
コンセプトに現実の商品は追いついているのか?
自分の考えている商品の長所は、お客様にとって本当に価値があるものなのか?
そういった身内の議論では出てこない情報を、ユーザーから直接引っ張り上げ、つなぎ合わせて解釈を作り上げ、商品に改善を加えるプロセスについて綴ります。
商品開発は往々にして長い年月とコストをかけるもの。「そもそもコンセプトがズレており、どんなに完成度を上げても売れないものだった」や「他は満点なのに絶対に抑えるべきポイントを外して全然売れない」ということを起こさないためにも、事前の調査は非常に重要です。販売前に必ず実施しましょう。
しかしながら、テストやサーベイは一定のスキルや慣れが必要な行為です。アプローチを間違えると、結果が180度変わるなんてこともよくある話。そんな癖の強い波を乗りこなすノウハウの一つとして、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは本題に入りましょう。
目次
目的の整理:何を検証するためのテストなのか?
市場調査のことを考える前に、エンジニアリングチェーン(企画・開発から販売・サポートまで)の観点から商品の魅力が顧客に伝わるまでのフローを整理してみましょう。
商品の価値を認めてもらうためには、
①商品のコンセプトがターゲットユーザーにとって価値があり
②そのコンセプトを実現する商品となっており
③その他のNG項目がなく
④価値や魅力が伝わるメッセージが顧客に伝わり購入され
⑤正しく使われて価値を実感する
という気が遠くなるプロセスのすべてをクリアする必要があるわけです。
商品開発のための市場調査は、これら五段階のそれぞれについて仮説をもって検証する行為です。
調査設計をする前に、この市場調査はどのプロセスの仮説を検討するものなのか?という問いへ答え、調査の目的を明確にしましょう。
そして、検証したい仮説ごとにそれぞれの検証手法は当然異なります。
コンセプトの検証であれば、コンセプトをぶつけますし、商品の性能の検証であれば、試作品、メッセージの検証であれば実際に顧客にメッセージを投げかける必要があります。
それぞれのフェイズごとに、意義やTipsを交えながら詳しく解説していきましょう。
検証①:コンセプトは魅力的か?
商品企画の根幹であるコンセプトの検証です。
コンセプトは商品を構成する要素の中で間違いなく最も大事な要素です。
そもそも目指そうとしている部分に需要がなければ、どんなに品質が高いものを作り上げても意味がありません。
ゆえに、コンセプトの検証は事業開発の早期に求められます。
コンセプトの検証方法は簡単。ターゲットユーザーに対して、コンセプトを書いた紙(コンセプトシート)を直接見せて、反応をうかがうだけでOKです。
重要なのは、ヒアリングの仕方です。
明らかにしたいポイントは、おおむね
①解決する課題は本当にクリティカルなものか?(Whatの精度)
②ターゲット顧客は正しそうか?(Whoの精度)
③コンセプトによる解決の方向性は正しそうか?(Howの精度)
④価格も含めた購入意思を得られるか?(価格設定の精度)
⑤他社製品ではなく自社製品を選ぶ理由は何か?(差別化のポイント)
の五つでしょう。
これを明らかにすることを目指し調査設計を行っていきます。
コンセプト検証フェイズでは、真っ先にコンセプトシートを見せて感想を聞きたくなるかと思いますが、焦ってはいけません。
まずすべきは顧客課題仮説の検証です。
理想の状態に最速でたどり着くためには答えの精度よりも、むしろ問いの精度を上げることが重要なのです。
では、顧客の課題とは何か?
よく論じられるのは「顧客の不を見つける」という観点です。
不満、不安、不便。これらを感じるとき、人は理想を想像し、無意識に現状と比べています。そのギャップである「不」を取り除き、満足、安心、便利を提供することができれば、お客様に価値を感じていただくことができます。
例えば、弊社で販売しているNagara(ナガラ)を例にとると、以下のような「不」が存在します。
・デスクで食事をとりがちだけど、携行食は美味しいものがなくて、不満
・コンビニの食事だけだと、栄養が偏る気がして、不安
・おいしい加工食品はあるが、持ち運びがしずらく、ゴミがベタベタするので、不便
では、これらの「不」はどのように見つければよいのでしょうか?
大方針は「多くの人を浅く調査するよりも、少人数を深く観察する」ことです。
ターゲット接触手法としても、対面>>WEB会議>>>>>>アンケートの優先度です。極力会って話をしましょう。なぜなら「不」は往々にしてユーザー自身も認識していないものだから。
ここで例として、1000年前のケニアに思いをはせてみます。
はだしで生活をする現地の彼らのために、足の保護を目的とした「靴」を販売することを思いついたとします。
そこで、課題仮説を確かめるために、ケニア人にアンケートを取ることにしました。
「あなたは、足に何もつけずに走り回ることで困っていますか?」
この問いを提示した際、おそらく多くの人が「別に困っていない」と答えるのではないでしょうか?
なぜなら彼らにとっては、なにもつけていないことが普通だからです。
一方で、しっかりと一人のケニア人と向かい合うと、足に傷跡を見つけたり、草むらを歩くときに、注意深く虫をよけて歩いていることに気づくはずです。
そこに気づけば「足を怪我したことがあるんですか?」「虫にさされることが多いんですか?」などの、顧客のベネフィットに対してよりクリティカルな質問を投げかけることができるようになり、「この人たちには靴が必要だ」という確信を得ることができるのです。
そこから先はコンセプト、つまり解決のアプローチと、その金額の提示です。課題として認識したものを絡めながら、商品の特徴と価格を一枚の紙に書いて提示すればOKです。
例えば現在弊社で開発中のNagaraのコンセプトシートを作るとしたら以下のようなものになります。
これを見せながら、「どこへでも持ち運べて、すぐに飲める、美味しさにこだわった冷製ハンディスープ」が「忙しいビジネスマンやワーキングママの、食事に対する、美味しさの不満・栄養の不安・持ち運びの不便」を解決するだけの価値を値段分提供できるのか?を検証します。
ただしここで重要なのは「ユーザーの言葉を鵜呑みにしないこと」です。
紙で特徴を書かれただけで、しっかりとユーザーに使用感を含めて想像してもらうのには限界があります。体験は紙だけでは伝わりません。
コンセプトに対して、多くの人からドンズバの反応が得られなくても、多少「高すぎる」といわれようとも、解決すべき課題がクリティカルであれば問題ありません。商品企画の半分は、自分のアイディアへの妄信です。気にせずまずは形にしましょう。
この段階の最後の検証ポイントは、「なぜ自社製品を選ぶのか」です。
2021年の現代。様々な商品にあふれています。この世の中で「いままでに全くないもの」なんてものはほとんどないと考えていいでしょう。あぶりだされた課題に対して、真正面からではなくとも、解決に寄与するアイテムやサービスはなにかしら存在するはずです。
それら競合に対してのユーザーの反応はしっかりと抑えておくべきです。
競合製品は、ユーザーの「不」に対して、どこが解決できていて、どこが解決できていないのか。ここのあぶりだしもとても重要です。
「顧客が求めていて、競合が提供していないけど、自社が提供できるところ」を追い求めるのが商品企画の基本。いわゆるバリュープロポジションマッピングですね。
検証②:商品はコンセプトを実現できているか?
コンセプト仮説が明確になったら次にするもの。それは試作、プロトタイピングです。
解決すべき課題と、そのアプローチを明確にしたら、それを現実世界に具現化します。
そしていよいよ「実際の試作品を使ってもらう」フェイズです。
ここで明らかにするのは
①思い描いたコンセプトを形にできているのか
②形になった商品は実際にユーザーの不を解消しているか
です。
前述のコンセプトシートで目指した仕様や体験が、顧客目線で実現できているのか。シンプルに使っていただき、感想・反応を調査しましょう。
この時のサーベイ手法は、20人-50人程度の中人数で、アンケートとグループインタビューを織り交ぜたものにすることがおすすめです。
「心地よかった」や「美味しかった」のような主観が入る評価をアンケートで集団処理することで意見のポピュラリティを担保するとともに、感動や不満点などの文章ではとれない情報を救い上げたうえで、その場で共通認識なのかを確認するグループインタビューというように使い分けるのがおすすめです。
リサーチをするにあたって重要なポイントは、意見を正しく吸い出すことです。
人は聞かれ方によって、答える内容が大きく変わる生き物です。
自分の本当の気持ちを言語化できない。様々なバイアスで回答がゆがむということはザラにあります。むしろそれは前提と考えた方がよいでしょう。
ということで、意見を正しく吸い出すための、いくつかのTipsを紹介していきましょう。
調査Tips
①5段階評価より10段階評価
調査設計の際、往々にして「十分に美味しいこと」というような定性的かつ、点数化したくなる項目が発生します。
こういった場合については5段階評価ではなく、10段階評価にすることで精度が上がります。
「人は優しく、心の評価に+1くらいおまけをつける」という傾向と「最高点を選ぶのはなんとなく気が引ける」という傾向が合わさり、やたらと4に票が集まりがちなのが理由です。そしてそれを見たリサーチャーは「うーんなかなか高評価!」と浮かれてしまいます。The ミスリード。残念。。。
そして10段階評価の場合、「9と10にどのくらい集まったか?」を重視してみると良いです。7や8は忖度やバイアスで来ることもありますが、9や10は、本気で評価していないとなかなか来ないものです。
ささやかなコツですが、やるのはタダなので是非実践してみましょう。
②アンケート前に他者の意見に触れさせない
これも割と基本的な話ですが、アンケートを取る際は、その人自身の感じたこと、考えたことのみを意見に反映させることが必要です。
グループインタビューや意見交換を行った後のアンケートは、必ずその議論の流れに引っ張られ、本当の意見を吸い出すことはできません。
なのでもちろん調査工程は 体験→アンケート→インタビューの順です。
集団としての意見を個人の意見として反映させないために、体験の後はすかさず答えてもらう、待機時の部屋を分ける、プレゼン時はリアクションを控えてもらう等の工夫で環境をコントロールしましょう。
③「買いたい」という意見は信用せず、身銭を切った事実のみ信用せよ
アンケートやインタビューで「とっても欲しい」「是非買いたい」という意見がたくさん取れて、「こりゃたくさん売れるぞー」と意気込んで発売したものの、ふたを開けてみると全然売れない。
これは、めちゃくちゃよくある光景です。
これには主に二つ理由があります。
第一に、大前提、調査に協力していただけるような方は、とってもお優しいんです。
自分の時間を割いて人の商売の手助けをするような素敵なお人よしなんです。
そしてそんな方々は、目の前の人間が求めている言葉を自然とかけてくれる。
そういう理由で大概ポジティブにバイアスがかかります。とっても嬉しいお話なのですが、調査としては差し引かねばなりません。
第二に、こちらが本命なのですが、調査時の体験は自分のお金を払っていないんです。
購買行動は、お金という尺度で目の前の商品の価値を図り、意思決定をするプロセスです。
しかしながら、調査の時は自分の財布を一切痛めていない。
価格の情報を受け取ったとしても、実際に払っているわけではないので自分事として価値の判断ができにくい環境なのです。
つまり、本来の「この値段に対して良いか?悪いか?」という購買判断ではなく「この商品は良いか?悪いか?」という評価のマインドセットになってしまう。
一生懸命に作った試作品です。代金を払うことを度外視したら、たいてい良いという結果になるに決まっています。でも残念ながら、モノを買っていただくということは、もっともっと大変なことなのです。
検証③:KO(ノックアウト)要件はないか?
さて、次のセクションに参りましょう。こちらは②と同時に明らかにすべき観点です。②でご紹介したアンケートやインタビューに盛り込みましょう。
テーマは「KO(ノックアウト)要件の排除」です。
KO要件とは、「ほかの要素がどんなに優れていても、その要件を満たしていなければ著しく購買確率が下がるもの」です。
男女の恋愛における「他がどんなに良くても、たばこを吸う人だけは絶対に嫌」の「たばこを吸う」の部分ですね。
②は競合品に比べて優れた部分、つまり差別化のパワー探るのがテーマでした、反対にこちらの③は、競合品に劣ってはいけない点、つまり同質化すべき要件とそのハードルを探るのがテーマです。
そしてその際、「どこまで達成するのはマストなのか?」という部分も明らかにしておくと、とても商品の調整がしやすくなります。
商品企画はいわゆる"ステータスの割り振り"の様相を示すことが多々あります。
例えばドリルであるならば、パワーを重視してモーターを大きくすれば、当然重くなって取り扱いづらくなるし、極限まで軽くすれば、パワーも電池もちも弱くなる。すべてを最新の無敵のスペックにすると、今度は値段が高くなりすぎる。など、トレードオフだらけの中で、限られたステータスポイントをどこに割り振るのかをしっかり考える必要があります。
その時の戦略の王道としては、ギリギリ超えるべきハードル(同質化点)をギリギリのラインで超えた上で、コンセプトのコアバリュー(差別化点)に一点張りするという考え方がうまく行くことが多い印象です。
ここの感覚を消費者の気持ちと合わせていくのが、良い商品を開発する必須要件だと思っています。
さて、ここまでの①-③で、商品そのものの開発のためのインプットは出そろったかと思います。あとはこれらの情報を参考に、具体的な数値や感覚含めたターゲットを設定して、ひたすら商品を追い込むべし。です。
再度ユーザーテストを行って精度を上げる工程ですね。
検証④:魅力が伝わるメッセージを発信できているか?
③までは、商品企画と商品開発のための仮説だし、及び調査のお話でした。
ここからは、少しイメージが変わって、コミュニケーションについてです。
どんなに素晴らしい商品も、その素晴らしさが伝わらなければ購入していただくことはできません。そしてコミュニケーションの骨組みを強固にすることを目的とした時に、検証すべきはメッセージとストーリーです。
それぞれもう少し掘り下げましょう。
まずはメッセージ。
メッセージを一言で表すと「ユーザーに最も伝えるべき価値」でしょうか。
多くの商品にとって、セールスポイントは無数に存在するはずです。その中で、この商品が一番に伝えるべきものは何なのか?を考え抜きましょう。
基本的にはコンセプトメイクの時に指標にした「解決すべきユーザーの課題」に直結させるのがベターなはず。逆に、そこが一番の売りにならない場合は商品企画の骨組みが曲がってきている可能性があります。見直しをかけましょう。
次にストーリー。
ここで言うストーリーとは、相手に情報を与える順序を指します。
近年のD2C事業における、開発背景や想いを伝える行為とは区別しているのでご留意ください。何を伝えるか?の部分なのでむしろこのフレームだとメッセージですね。
同じ情報でも、伝え方で、相手に残る情報量や印象は大きく変わります。
プレゼンを受ける側の気持ちを考えて、どのようにプレゼンテーションをすれば、伝えたいメッセージに深く共感していただけるのか?その部分を練って検証します。
ここでの組み立てのヒントになるのはゴールデンサークル理論です。
通常の商品説明だと、商品を起点としたWhat→How→Whyの順番でのプレゼンテーションとなりがちです。
この語順で、一時期話題になった生ビール缶を例にとって説明してみましょう。
今回ご紹介する新製品はこの生ビール缶です。この商品は、ふたを開けると、生ビールのように泡が立ちのぼるのが特徴です。(What)
お花見等の屋外や自宅でも、居酒屋にいるような気分が味わえたり、一緒にいる人で泡で盛り上がったりすることができるんです。(How)
この商品で仲間や家族とのひと時が、より良いものになるでしょう。居酒屋に行きづらいこの時代にピッタリの商品です。(Why)
これも悪くはないですが、ちょっぴりツルっとしている感じがしませんか?
対して、ゴールデンサークル理論の場合です。
こちらは、目的や背景を起点にWhy→How→Whatの順番に語るのが特徴です。
再び生ビール缶で例を見てみましょう。
コロナウィルスの影響で外食に行けず、楽しいお酒の場が減りつつあります。仲間や家族との素敵なひと時を、ビール屋の立場から改めて創り出したいと思いました。(Why)
そのためには、自宅や外でも居酒屋にいるような気分が味わえたり、一緒にいる人がわっと盛り上がる。そんな商品があれば良いと考えました。(How)
そうしてできたのがこの生ビール缶。開けた瞬間に生ビールのような泡がたちのぼる仕掛けです。まさにこの時代のための缶ビールです。(What)
いかがでしょうか?
この辺は使い分けではあるのですが、強い想いやメッセージ性を持ったコンセプトの場合、Whyからはじめる方が刺さりやすい傾向があります。
モノに満たされたこの時代、わざわざ特定の商品を買っていただくには、意義(Why)がますます重要なのです。
さてさて、だいぶ脱線したところで、検証方法のお話です。
方針はシンプル。実際にユーザーに語りかけましょう。
メッセージを抽出し、ストーリーとして組み、直接ユーザーに語りかけ、反応を観察します。WEB等でのプレゼンテーションの想定に合わせて、パワーポイント等を活用しながら対面でプレゼンしてみましょう。
結果の救いかたとしてはアンケートも良いのですが、何より意識したいのは、どのポイントでユーザーの表情が変わったのか?や、どのキーワードでユーザーがうなずいたか?等の一次情報です。
ユーザーが我々に気持ちを伝えようと言葉にすることで、多くの場合情報の純度は下がります。適切に表現できなかったり、気を使った言い回しになることで発生するミスリードも少なくありません。自然な反応や表情が何より純度の高い、重視すべき情報です。
つぶさに相手を観察し、情報を余すことなく持ち帰りましょう。
検証⑤:顧客に正しく使ってもらえるか?
最後のセクションです。
こちらは、購入後のお話です。適切なコンセプトと商品設計、そして適切なコミュニケーションで魅力を感じていただき、購入まで至る。しかしながら、それでも顧客満足度が上がらないケースが多々あり、その原因の多くはコミュニケーションの課題です。
コミュニケーションといっても、広告等の話ではありません。取り扱い説明書、箱、同梱チラシやパッケージ、そして商品そのものによる、使用時のユーザを対象としたコミュニケーション群の検証です。
基本的な観点は「商品のポテンシャルが十分発揮できる使いかたをしてもらえるか?」。いわゆる使いかた問題です。
使いかた問題が発生した例として挙げられるのが、化粧品D2C企業、北の達人の前身である「北海道.co.jp」の取り扱っていた冷凍かにしゃぶです。
味に絶対の自信があるかにしゃぶの評価が「美味しい」と「まずい」にきっぱり割れるという事象の原因を突き止めたところ、解凍の仕方、熱の通し方等、多くのユーザーが本来の魅力を損なう調理工程で食べていたことが分かったそうです。
当時の木下社長は、かにの茹で方マニュアルを同梱し、顧客満足度を向上させることに成功しています。
このような問題をあぶりだす手法として挙げられるのは「自宅で使用するような環境で実際に使ってもらい、それを観察する」ことです。
ユーザーが自宅で商品を使うとき、どこに注目して、どういう手順で、何を読んで使用するのか?どの段階の何に迷うのか?使用導線上に迷いを解決する適切なコミュニケーションを埋め込んであるか?そして、それらは有効に機能しているのか?という観点で観察します。
当然、観点からもわかるように、使用していただく商品は、細部も含めて本番同等のものであることが求められます。
通販事業であれば、箱を開けるところから、実際に使用するシーンまで、実際に実施してもらうことが重要です。
商品開発の大詰めの調整のインプットとして活用しましょう。
結びとして。
ここまでで、コンセプト立案から、ユーザーへの価値提供までの流れと、それらのユーザー調査を基本としたブラッシュアップの手法についてご紹介してきました。
これらすべての調査を行うことは稀ですが、「こういう観点での検証が有効」もしくは「こういう検証の手法がある」ということをしっかりと認識しておくことは、商品企画・及び開発が幾分かスムーズに行う一助となると信じています。
ただしかし、これらの調査や検証を行うにあたって、絶対に忘れてはいけないことがあります。それは「調査はどこまで行っても調査であること」です。
実際の使用環境や、どこまで情報を得るのか、どういったカスタマージャーニーで購入するのかは、調査環境で再現するには限界があります。
調査で得られるアウトプットは、それ自体は事実ではありますが、それ自体は通常の購買状況とは異なります。調査で良好な結果を出すことが目的にならないように注意しましょう。
得られたインプットと、商品への自信と、商品について考えた時間をもとに、最後の最後に意思決定を下すのは、開発者本人です。そこの責任は外に出さないように心しましょう。
株式会社Taste and Logicでは、商品開発における市場調査支援を実施しています。
調査設計からリサーチまで、幅広く対応しております。
初回相談は無料となっておりますので是非お気軽にお問合せください。